お前を斃して私は本物になる 榊一郎作品関連 2017年07月10日 『永き聖戦の後に2 スケイプ・ゴート』著者:榊 一郎イラスト:猫缶まっしぐら(ニトロプラス)魔王を討伐した英雄の生き残りであるジンゴと、議会からも魔族からも追われるメイベル。メイベルを匿うジンゴの前に現れたのは、歌姫にして訓練された強力な勇者、〈ミスリル・チップス〉の少女3人だった――新シリーズ第2巻、読了。“魔王と勇者の対立”はファンタジーにおけるベッタベタな王道で、『まおゆう』や『はたらく魔王さま!』という変化球もすでに投げ尽された感がある。そんな一種のブームが終わった今、榊一郎が書く“魔王と勇者の対立”が本作である。悪い魔王がいるから勇者がそれを倒す――別にそれだけでいいのだが、そこに細かい理由付けをしていくのが榊節(さかきぶし)。それこそ『スクラップド・プリンセス』や『ストレイト・ジャケット』の頃から、理詰めで物語を構築する職人気質で、本作でも「そういう理由付けをするのか……」と感心する事しきり。設定や物語だけでなく、キャラももちろん魅力的。まずは挿絵にもなっている人型魔物・ヴィオラ。そこまでプッシュされた訳でもないのに、不思議と愛着が湧くのは、イラストの力もあるのだろう。しかしこのヴィオラ……エロいわ。そして、ヒロインのメイベルも可愛い。榊作品としては割りと珍しいスタンダードなタイプのヒロインなのだが、設定や境遇が特殊だからこそなのかもしれない。バックボーンが特殊なのに普通――それが良い的な。この挿絵のシーンも可愛い。作品としては一応、これにて完結っぽい。続きがあるかどうかは売れ行き次第らしいので、売れてほしい。いや、物語としては綺麗に一区切りなのだが、続きが読めるなら読みたい終わり方なので――特にヴィオラ!物語のパターンは使い尽くされている。しかし、切り口を変える事で新しい物語になる……か。 PR